アイザック①Intelligence Boy【インテリジェンス・ボーイ】

●背中 始 謎

フェアバンクス中心部の桟橋。

アイザック=ハックスレーは、まだ午前のゆるやかな陽射し反射する海面を―――

そしてその先に設けられている貿易港の様子を、瞬きも忘れ見つめていた。

朝の真新しい空気が、肺いっぱいに満たされるのを感じながら、

周囲の環境を全身で観測する。

テラフォーミング星にしては、思いのほか清浄な空気の味に、心地良さより先に驚きを覚える。

小さな身長。歳は12。

ひょろりとした白肌痩身の少年は、頭にキャップ帽、トレーニングジャージに身を包んでいる。

持ち物は、後ろ下げのショルダーバッグのみ。

何が入っているのか、外面からは分からないものその膨らみの小ささから察するに、

大したものは入っていないことが見て取れる。

すると片耳穴に装着していた耳携式の端末から、

ピラピラリン~☆。

というあざとい効果音と共に、少年の名前を呼び留める、甲高い少女の声が聞こえてきた。

「ザック~全部調べたんだけどねぇ、やっぱり全部予約でいっぱいだったよん☆」

本当の少女が発声しているような、きわめて流暢なイントネーションのAIボイスがザックの耳元で話す。

電脳妖精サイバー・ピクシーのシエラは、

アイザック少年の一人旅を電脳ネットワーク世界より賑やかに支える、助手バディだ。

現実世界のザックに、ネットワーク内を巡回してきた結果を伝えてきたのだ。

「う~ん、そっか。」

アイザックは耳奥から聞こえてきた、電脳少女の声に静かにそう返答した。

「これからどうする?」

「そうだね、まぁちょっと予想はしてたけどやっぱりダメだったか。

 この時期に惑星メテラ行きの便はやっぱ厳しいよね、」

「じゃあじゃあわたし、もう少しフェアバンクス(ここ)のネットワーク中を泳いできていい?」

「うんいいよ、便がないんなら仕方ない。今日一日はフェアバックス(ここ)をもう少し楽しもう。」

「やったーっ!」

「じゃあどこから行こうか?」

元気な独り言を言い続けるインターフェースとぶつぶつと話しを続けるアイザックは、

傍から見ると独り言を言っているように見えたため、

背後を通りゆく幾らかの人は、おもわず不審な目を向けながら通り過ぎていく。

しかし当の本人のザックは、そう見られていることを全く気にする素振りを見せなかった。

■目 開 終

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