疾走する列車。
それは加速を続け、止まらない。
魔術教団マスカレイドの一味によって占拠されたその暴走列車は、完全に制御を失っていた。
そんな列車の様子を、高台より見つめる一人の少女が一人。
目立つのは小柄であることと、夜風になびく黒いロングの髪。
少女は付けていたサングラスを外した。
すると、可憐で整った顔立ちが露わになる。黒真珠のようなクリクリとした双眸。丸みを帯びた輪郭線。
人形を思わせるような可愛らしいルックスだが、その目元から放たれる視線は、どこか凛とした人格を感じさせる。
やがて暴走列車の姿が、その黒髪少女の視線に入る。
眼下の景色のなかで、飛び抜けた速度を持ってして動くその姿を捉えた少女は、自分が立っている屋上の真下ーーーそれを通過する数秒前のタイミングで、躊躇なく飛び降りた。
暴走する列車の天井を目掛けて。