月光に光る雲を抜け、その透明な”一滴しずく”は、
地球の海へと没した。
ぴとんっ。
量にすればわずかo.1mllにも満たない、宇宙より飛来した一滴しずく。
やがてその黒い液体は、海中のプランクトンを貪りはじめた。
やがて少し経ち、成長した液体は小魚を食み出した。
大きくなるにつれて、食べる魚の大きさも、その種類も
拡ふえていった。
少しずつ成長した液体は、満たされない渇きに翻弄される。
これは何だ‥?うん‥この味は…。これは違う…。
もっと大きく、もっと多彩に―――。
体験したことのない栄養素あじわいが要る。
やがて液体それは、地上に息づく生物たちに目を向けた。
人工灯に照らされた宇宙社会コミュニティー。
ぽつぽつと歩いている生物がごまんといる…。
液体それは、水面からそれらを見つめていた。
やがて――――
その街の光に誘われるがまま、液体は地下水路へと入っていった。