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静寂の夜空を、星々の流河りゅうが。
悠久の煌めき。
少年の闇頭上に拡がのるは、宇宙の無限(ほしぞら)だった。
名を、ノア=テイラー。
瞳の色は、海の融けたようなオーシャンブルー。
そのまなざしに宿る光は、深い闇夜の中でさえ、
無垢な輝きに溢れている。
瞳だけではない。髪もまた、不思議な仄光(びこう)を湛えていた。
夜風に髪が揺れるたび、巨月(えいせい)に照らされた部分が
真珠のような燐光を放つ。
そんな不思議な特徴を持つノアには、”夢”があった。
それは”たった一つ”だけ。
この惑星から脱け出して、別の宇宙(せかい)に行くこと――――。
ノアの傍らに在るのは、くろ焦げた宇宙船の残骸。
今日もまた、ノアは試行(ちょうせん)した。
それでも結局、飛び立つことはできなかった。
その失敗を表わすように、ノアの頬は煤で汚れていた。
だがノアの心には、一片の”迷い”もない。
行く―――。
必ず行く―――
そう、なにがあろうと絶対に行くんだ――――。
その刻(とき)、
そう固く誓う少年の瞳の虹彩を、一筋の流星が通過していった。
「あっ!流星ッ―――!」
ノアは反射的に声を発し、人差し指を夜空に向けた。
久々に見れた稀有な光景(げんしょう)に、
水面のように静まっていたノアの心に、
ぷるるんっという感動の波紋が投げ入れられる。
高揚感に、自然と口端に笑みが浮かぶ。
数え切れぬ星の瞬き。
小さな体に、膨大なエネルギーを宿すノア。
挑戦を待ち受けるように見下ろしてくる宇宙の輝きに、
立ち向かい続ける。
ぼくは見たいんだ。
まだ見ぬ人とか、場所とか、ワクワクさせる、いろんなものを―――!。
ぼくは―――宇宙せかいに逢いに行ゆく―――――。