ダリル ニーガン
ゴゴゴゴゴ・・・。
古代技術によって、真っ黒な壁に光の長方形が
走り、その光線ガイドラインの形に従うように
壁が圧し出される。
やがて繰り抜かれた立方体は脇へと退き、牢への通り道が開かれた。
プライムはできたばかりの通り道を歩いていく。
そしてすぐに眼前に目標を捉える。男が奥壁にもたれかかるようにして座り込んでいた。
その体格は座っているからこそ詳しく分からないものの、
2mあるプライムの体格と同等、もしくはそれ以上の巨躯を持った男だった。
しかしその耳と目は重々しい拘束具によって施錠ろっくされており、
両手両足も鎖枷によって繋がれていた。
そう―――これほど酷に自由を奪われてしまうような大罪を犯した過去が、目の前にいる男には在るのだ。
そして忘れかけていた凶悪性を、プライムはすぐに思いだすこととなった。
すんすん、すんすん・・。
男の施錠ろっくされていない鼻がぴくぴくと動いた。
空気に流れる、極細な空気の揺れを肌で感じ取ったのか。
或いはプライムの肉体より発される無二の臭いによって来訪者を識別したのか。
その真偽は分からずとも、目耳の機能を抑制された大男が、ニヤついた表情で切り出した言葉は
「久しぶりだな・・あいたかったぜ、”ぼうず”・・・・。」
だった。
プライムは敵が罪悪人だと知り得ながらも、流石とした言いようのないその芸当に、
久しく感じていなかった”武者震い”というやつを感じていた。
■
●ガコンガコンガコン!!
強力な電磁力によって組み込まれた
牢獄の施錠が、重々しい音を立てて解除されていく。
そしてプライムは、開け放たれた牢獄内に、
躊躇もなく入っていった。
そして内部にいた男に挨拶代わりの言葉を駆ける。
「久しぶりだなギャラガン。」
ジャラジャラ・・・。
両手首に付けられた鎖手錠を鳴らしながら、
その大男はゆっくりと頭を上げた。
そして下品な笑みを浮かべたその男は、
プライムに向かってこうつぶやいた。
「ハッハッ!よう、はなたれ小僧・・・」
■
「オレは二度と会いたくなかった。」
「ははっ、ずいぶん嫌われたな。」
ここの会話はいっさい聞かれない。
世界一堅いが、世界一安全な場所だ。
神以外は盗聴できねぇ。」
「はは、それでとうとう・・
オレの力が必要になったわけだな・・。」
「なぜだ?オマエはぶっ壊したいと言ってたじゃねぇか!」
「オマエラの指図は受けねぇ。」
「条件がある。俺の仲間も解放しろ。
それが第二の条件だ。」
「第三は?」
いったいどんな問題が来る?
「食いきれねぇ量のトゥインキ―を用意しろ。
地球は破壊しねぇさ。トゥインキ―が食えなくなる。」