「”死”は、終わりじゃない。一つの”区切り”に過ぎない。
またあたらしく始まるというだけさ。」
長年、宇宙を旅してきた。
時間が経過する感覚など、もうとうに忘れた。
眠ることもできない。
肉体は活動を続けながら、常に再生プロセスを行っている。
だからルースには時間経過の感覚がほぼない。
どんな生命体にもある”老い”というプロセス。
否定的なイメージの強いそれだが、実は老いというのには、
時間の経過を現わしてくれる指標という側面を持っている。
しかしルースには、その永遠の再生プロセスのおかげがあるせいで、
それを如実に体験することができないのだ。
自分以外の全ての生命体が享受しているそういった死などというものを
ルースは体験したことがなかったため、むしろ憧れすら持っていた。
もうどうにもならない状況であることは明らかだった。
ルースは、そういsて永久的に生きることのできる同胞たちを一人残らず
失ってしまったのだ。
共有する者がいない。一方的な喪失。
彼らは全員、一対となったうえで、そのまま死んでしまったのだ。
余った、ルース一人だけを残して―――。