#11【家族だ】

「ディル、キミはもう私たちの家族だ。

家族は助け合うものだ。だからいつでも助けになる」

そんな義父ルイスの言葉が脳裏をよぎる。

他人に何かを頼んだりするのは苦手だ。

それに家族というものもよく分からない。俺は生まれた時から

アルカディアという偽りの理想郷の中に捕らわれていた。

誰しもが母親がおり、父親がいて、時には兄弟姉妹だっているはずだ。

でも俺に、最初からそんな存在は一人もいなかった。

だから最初は何一つ要求せずにいたディルクだったが

数年前、初めてと言っていい第一号の要望は、

――1人で暮らせる場所が欲しい――だった。

そんなことを考えているうち、義理姉という名の同い年の女

ワイダとの約束の場所に付いた。

だがすぐに、ディルはある違和感に気が付く。

ワイダの横には、怪しげな二人の男が立っていたからだ。

ただ怪しいとは思っていても、その二人はディルも顔なじみである。

一人は赤髪の男・レディアント。

二人目は長身で、逆立つ黒髪が特徴的な男・クロード。

→挿入 二人のイラスト

いずれも、ヴァレンタインファミリーの側近である。

その二人は黒のスーツに身を包み、ワイダの横を守衛するように付き添っていた。

近づいていくとワイダがディルの接近に気が付く。

「ああディル、ようやく来た」

ワイダはそう言うと、横にいた二人に”帰っていい”という具合に目配せを送った。

主人にそんな視線を送られた側近二人は、それを察すると何一つ言葉をこぼさず、静かに去っていった。

こうしてボディーガードを雇えるのも、ルイスの持つ力のおかげなのだろう。

そんなことを考えながらぼんやりとしていると、

「ディル?平気?」

小柄なワイダが、上目遣いでこちらを見上げてきた。

「何が?」

「”スペクター”の手がかりがつかめるかもしれない。

でもあくまで冷静でいてほしい」

「そんなこと、言われなくても分かってる。」

ディルは心配そうなワイダをよそにそんな二つ返事を返した。

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