「ウォーマシンか。おもろそうじゃねぇか」
「遊びじゃないぞ」
「おめぇは真面目過ぎんだよ」
「つぅかこの車、天井空いたりしねぇのか?」
「そんなものは無い」
「ただただ黒くて高ぇだけかよ」
エイジャックスの文句は停まらず、
そのたびにワイダが不機嫌な態度を硬化させ、
ゼスは関わるまいと言った具合にホロウィンドウで
ネットをいじっている。

「んで、これはどこに向かってんだ?」
「
★
バレンタインファミリーの車が、大きな建物の前で停まる。
「ここは?」
「作戦基地」
不機嫌そうにワイダはそう言うと、歩いていった。
門前のロボットに、手の平に展開したマカを見せる。
するとロボットは、マカIDと照合し、やがて言葉を発する。
「ワイダ・バレンタイン様―――照合完了―――」
ゲートが開き、ワイダが入っていく。
続く様にゼスが、ウィンドウのアイファーライセンスマークを
見せると開いた。
「なあアイファーマークを見せればいいのか?」
「ああ、たぶん」
「おし」
エイジャックスはアイファーマークを警備ロボットに見せる。
しかしロボットが前者二人を見た時とは異なるリアクションを見せた。
ホロウィンドウに表示されたのは否認のマークだった。
「はっ?おい…んだよこれ‥?もしかしてオレの登録してねぇのか!?」
門前で叫ぶジャックの様子をゲートの向こう側から、心配と不思議の混じった表情で
見つめるゼス。

「おい影男!なんとかしてくれ!」
救けを求めるジャックに、「ちょいまち、掛け合ってくる」
そう言って立ち止っていたゼスは再び歩き出した。
そして前方を気持ちよさそうにあるくワイダの背中を見て、
なるほど…そういうことか…とゼスは静かに悟っていた。
★
数分後、ゼスがジャックのアイファーIDの新規登録をして、
通過させると、すぐさまやってきたジャックとワイダの口論になったが、
すぐに別の人物が部屋にやってきたことで、それは中断された。
そこに立っていたのは、大きな丸ゴーグルをした青年だった。
「誰だ?」
「オズだ」
「オズって、おまえの端末に搭載されてるAIのことだろ?」
「違う、人間だよ」
「マジで!?」
「エイジャックス?」
オズはエイジャックスに近づくと、いきなりそう言う。
「ああ…そうだが…」
「エイエイって呼んでいい?」
「なんて?」
「エイエイ。」
「好きに呼べ。」
異様な雰囲気を持つオズの様子に、エイジャックスは完全に気おされていた。
だがそこに、さらに自動ドアの開く音がした。
そしてゾロゾロと人が入って来た。
なんだかおもしろくなってきたな‥。
エイジャックスは増えていく顔ぶれを見てそう思うのだった。