何が起こっているのか、マスカレイダーは理解できなかった。
それは当然、人質客たちにも伝わった。あれほど悦にひたっていた者が、突然その手を止めたからだった。
だがその疑問はすぐに解消された。
影の続く青年が、ゆっくりと立ち上がったからだ。
その青年は、フードを深くかぶり、その両手はポケットにしまい込んだままだ。
フードからは、わずかに藍色の髪が視えた。
そんな謎に満ちた青年は、フードの奥から静止しているマスカレイダーをその瞳に捕らえると、足を横にぶらりとさせた。
その瞬間、マスカレイダ―の身体は宙に浮き、そのまま壁へ向かって吹き飛んだ。