「ありがとう。助かったよ、駆け付けてくれて」
ワイダは、素っ気ない様子のゼスに向かってそう言葉を投げかけた。
するとゼスは皮肉めいた言葉をワイダに返す。
「別に俺が来なくても一人で倒せたんじゃないのか?」
「まあ、そうだね。思ってたより大したこと無かったもんね。」
「でも、来てくれて助かったよ。ありがとう」
ワイダは素直にそう言った。
「ん、どうも」
ゼスは恥ずかしさを紛らわすかのように視線を景色のほうに向けていた。
「それじゃあ」
「ああ、また」
短い挨拶をかわすと、ワイダは話していたその屋上からさっと身を投げ出した。
ゼスの視界からワイダの小さな体が一瞬消える。が、
ワイダの身体は風を纏うようにして上昇すると、そのまま飛び去って行った。
ゼスはそのワイダの様子をみながら「いいな、魔法って」と心のなかで想っているのだった。