薄暗い静寂のなかで、”その男”は漂っていた。
藍色の永い髪は揺れ、道化(きいろ)い上着がはためく。

しばらくすると薄暗かった空間が、少しずつ灯るくなっていく。
男の浮かんでいた球空間が、無機質な白い明かりに満たされてゆく。
同時に無重力が解除され、空(くう)を踏んでいた男の両足が、
ゆるりと地面へ着地する。
男は目を見闢いた。神秘的な碧緑(コバルトグリーン)の瞳が露わとなり、

その視線が『X-エックス』の形をした窓を見つめる。
映っていたのは、闇い宇宙空間にぽつりと漂うひとつの惑星ほし。

その碧さは海洋の存在を、その緑は大地の存在を現わしていた。
そしてその球体を包むように掛かる一つの環。

神秘眼に、眼前の星光が映える。
男はしばらく見つめた末、口の片端に不敵な笑みを浮かべると、こう言った。

「MARVELOUS!!」